広瀬アリスの卒業特集を読んだ

その日は唐突に絶妙なタイミングで訪れた。
広瀬アリスSeventeenモデルを卒業する。
立派な話だった。女優の道を極めたいと6年4カ月のモデル活動に終止符を打つと決めた強固な意志が記事の一面を覆っていた。そして今月号には2009年にミスセブンティーンに選ばれてからのモデル活動すべてを詰め込んだ特集が組まれるという記載があって私を高揚させた。

この流れで切り出すのも可笑しな話だが私は全くと言ってセブンティーン読者ではない。服の趣味がかけ離れている。fudgeや&PremiumときにPOPEYE,BRUTUSといった所謂青文字系雑誌をこよなく愛しているため普段は目に入ることすらない。無意識のうちに趣向が違うからと切り捨てていたところがあったのだと思う。それでもセブンティーンを読んだことはある。というか読者以上に読んでいたかもしれない時期がある。

小学生の頃、というと気取っているが、良く利用する図書館にセブンティーンが常設されていただけのことだ。日刊◯◯や朝日〜などの難しそうなタイトルが並ぶ中、一際目立っていたのがセブンティーンだった。雑誌棚の中で唯一確実に読み切れる自信があったそれを、迷わず手に取った。正直に言おう、ファッションなんてこれっぽっちも興味がなかった。ただ昔から少しミーハーっ気のあった私は、秋色コーデ!とか着回しうんたら♡とか書かれたページをごっそりと飛ばして、モデルの連載や旬のタレント、ドラマの紹介ページを読むのが好きだった。まず右手で前半から約7割掴みそれを持ち上げて右側に追いやり左側の3割を堪能するというのがお決まりだった。図書館はほぼ毎日開いているが、雑誌が発売されるのは月に一度。毎日のように同じセブンティーンの表紙に歩み寄り昨日も見たページに何度も目を通す。味わえば味わうほど美味しいスルメ雑誌なわけでもなかったが、セブンティーンを読んでいる、ただそれだけで嬉しかった。

セブンティーンの魅力はどうか悪く捉えないで欲しいが、安っぽさにあると思う。今の私が熟読する雑誌と比べてみても、格段に服のお値段が現実的で、すぐ気軽に週末の買い物プランを立ててしまえる。欲しい!と思ったりいいな!と思ったりしたら手を伸ばせば届く範囲にあるものばかりだ。いつも変わらず、安っぽさがある。すごく女子高生の生活に密着してくれているその姿勢は、多くのJKを今でも虜にしている所以であろう。仮に突如代官山、裏原辺りのファッションカルチャーを取り入れ始めたとしたら休刊必至だろうと私は見込んでいる。いつも変わらず待っているセブンティーンがある。しかし、そんなある日鮮烈な事件が起きた。常に変わらないのがセブンティーンのあるべき姿だから鮮烈な時点で大事件なのである。

広瀬アリスがコマネチをしていた。身の毛がよだつ思いだった。何をしてしまっているんだろう、オフショットにも程があるのではないのか、すごいな、すごい。一気に笑いがこみ上げてきて、私は1人楽しく図書館の静寂を破った。赤面どころじゃない、慌てて書棚に戻すと類を見ない速さで駆け出し家に着くまで全速力で走り続けたのだった。

それからは広瀬アリスがどうしても面白くてファッションのページも少しは見るようになった気がする。もうあれを超える衝撃はなくていつものセブンティーンに戻ってしまったから、思い出せることはそれ以上ない。


そんなことをふと思い出した。ドラマ「釣りバカ日誌」が始まってからのことだ。ドラマ化が決まった当初、原作も映画も未視聴ではあるが何だか惹かれて絶対に見ようと決めていた。名作と言われるだけ中身も面白いだろうし、濱田岳は可愛いし大好きな金八ファミリーの一員だし、あとは他キャストが気になるところであった。そして、ヒロインの発表。正直がっかりした。広瀬アリス。好きか嫌いかの問題ではなく、旬すぎるでしょという若手俳優を見くびった偏見だ。ドラマ「黒の女教師」でクラスの女子リーダーを演じていたのは記憶に新しいし、ドラマ「大切なことはすべて君が教えてくれた」でも出てた記憶は残っていたが、当時の自分が演技上手いだの下手だの考えて見ていたわけではなく、どんな芝居をするかなんて思い出せもしなかった。名作というブランド品に若手俳優という鮮魚をあてがうのは、細いそれも極細の綱渡りに過ぎない、という考えしかなかった。

だが、違った、まるっきり違っていた。ヒロインのみちこさんは適役としか言いようがない。みちこさんは、怒ると秋田弁が飛び出す、ツンデレ、ドS、料理上手、と一般的な理想像からマニアックな可愛いポイントまで抑えてきている役どころだ。それが非常に上手い。持ち前のドライな声質で緩い空気に蹴りを入れてぎゅっとストーリーを引き締める。最近ではそんなみちこさんがハマちゃん(濱田岳)に惚れてきていて、その絶妙なもどかしさが私の胸を苦しめている。

釣りバカ日誌」とみちこさんの虜になったまま、私は学校の試験期間に突入した。試験期間とは酷で、向き合わなければならない現実から逃げようとする本能が作動する。どうにかして逃げ道を見つけようとするらしい。

試験3日前、ドラマにハマってから少しずつ覗いていたアリスちゃんのブログが更新された。妹と大ゲンカしたらしく、怒っていた。私は妹のツイッターを検索した。


私が初め見に行ったときはここまでのツイートが投稿されていた。そして姉である私は、躊躇いもなく広瀬アリスに声援を送った。良く兄弟がいる姉同士で話し合うことだが、2番目はずるい。要領が良い。広瀬家がその典型に当てはまるかどうかは別として勝手に姉という同一の立場から仲間意識を持ち応援した。バカだ、勉強しろ。

しかし私はもう一度妹のツイートを見にいった。


直後に投稿した私のツイートがこれである。


姉という生き物として、相当広瀬アリスに心酔している様子が見てとれる。大体人さまの喧嘩実況中継に夢中になるだなんて馬鹿げすぎている。

それにしても、何らかの理由で叱るも反撃してきた妹に憤り和解した後にもタクシー代4690円を請求する姉、良すぎる。超絶に尊い。この話は姉という生き物の偉大さを感じる逸話となった。全姉を代表して花束届けたい。

それだけじゃない。その数日前に更新された、6話という題のブログがやばかった。


こちらは「釣りバカ日誌」公式アカウントからツイートされた写真だが、やばいブログと同じものである。やばくないか?天下のベテラン俳優・西田敏行さまに何てことさせてるんじゃ!!ピースの向きチャラいでん!!アリスちゃんポーズってなんじゃおら!!!なに爆モテJKポーズ2人して仲良くやってるんじゃ!!

嬉しくて嬉しくて自然と笑みが溢れた。何か人の気持ちを柔らかくさせる理屈じゃ証明できない天性を、アリスちゃんが持っていることは明らかだった。もちろん西田敏行さまがとても柔和な方だからというのも関係してくると思うけど。実際、アリスちゃんはドラマ「玉川区役所 of the dead」で共演した先輩役者さん達のことを次々と聞いているこちらが恐ろしくなるような呼び方をする。林遣都さんのことはケントパイセン(ケントもトーン変えて)、金子ノブアキさんのことはノブアキパイセン、片桐仁さんのことはジンパイセン、そして極め付けは高橋努さんに対するつとむん♡これはやばい。相当やばい。けれどそんな呼び方をされる方々は揃って馬鹿にしてるだろと言いながらも嬉しそうにアリスちゃんに抗議する。一歩間違えると態度の悪い礼節を弁えない人間と捉えられてしまうのかもしれないが、それが許されている。それは私達が興味本位で真似できることとは到底思えず、やはり何だか許してしまえるというこの人の持っている天性が生み出した怪奇現象であり夢の国でありと思うのだ。

そして数日前、やっと友達から、広瀬アリスの卒業特集を手に入れた。たった2ページが特集と言えるのだろうかとやや不満に思いながら読みはじめたが、広瀬アリスの底力はすごい。2ページの定義が覆るほどの濃さ。2ページってこんなに詰めこめるんだっけ?っていう。アリスちゃんが築き上げてきた6年4ヶ月という層の厚さを感じた。

無理矢理読者になるかと腹を括った途端の卒業発表に勝手に偶然以上のつながりを感じて、卒業特集号は発売日に買わねばと思っていた私は頭がおかしいんだけど、女優の道を進むアリスちゃんにとって今までいたセブンティーンという世界が如何に大切だったかが良くわかった。もう女優なんだからモデル時代なんて関係ないと、無碍に扱ってしまうのは何だか違う気がした。

後輩に喋りかけてもらえず寂しかったなんていう乙女な先輩すぎる一面や、お決まり(私には衝撃が走った)の変なことしてる記事も、というかコマネチは印象深い記事として御本人選ばれてなくてうん、それ以上のものがジャガイモさながらにごろごろ転がってたんだと気づいた笑そんな卒業特集、

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はなばーん!めどーん!おーまいがっ!
で吹き出した私は、安心した。だって、


今日も広瀬アリスが面白い。

お誕生日おめでとうございます、
釣りバカ最終回と合わせて去年よりたくさんの幸せなことがアリスちゃんに訪れますように。